始原東洋医学とは

始原東洋医学(潜象界からの診療)とは、
病体からの情報で、五感では感知できず、印知感覚だけで把握できる情報を基にして治療を行う診療並びに学問のことです。

印知感覚について

総ての生物には本来、原始感覚とでも名づけられるべき特殊の感覚があります。この感覚は五感とは全く異質の感覚で、現代の人間は殆どこの感覚を忘れ去っていて、その存在さえも認知していません。この感覚を印知感覚と名づけます。この感覚は訓練によって再び獲得できます。

始原:物事のはじめ


「湯液鍼灸作用同一論」並びに「全医療に共通する治癒の原理」

「湯液鍼灸作用同一論」とは、

身体に反応を起こす目的で、体に影響を与える場合、 その与えた影響の、身体に反応を起こす仕組み、ならびに作用の仕方については、 湯液と鍼灸の間には、本質的には違いはない。

という考え方です。

 

湯液と鍼灸という全く方法が異なっていて、共通性が全然認められないと思われる治療が
本質的には違いはないとは、どんな根拠に立っての論なのだろうか?
本質的とはどういう意味なのだろうか?等の疑問を持たれるのは当然のことです。

以上の疑問は、練習の実践に因って得られる、原始感覚とでも呼ばれる感覚を用いる事によってのみ
理解が出来る部分があるので、言葉だけで説明するのは、非常に難しいのですが、
出来るだけ疑問に答えて、理解を得る為には、
この説の成立した経緯の概略を述べるのが最良の方法だと思います。

この論は一つの新しい原理を基に、自然に成立した説なのです。

ある未知の条件で皮膚が刺激を受けたときに(皮下注射) 、
生体に、説明が出来ないような特殊の反応が起きる事があるのを知り、
この現象が起こる条件や理由を追求して、体表に地図に描かれた道路様の線が存在して、
これが生体に大きな影響を与えるらしいという事を知りました。

私は、新知識としてつかんだと思ったのに、
鍼灸では既に昔から経絡と名づける筋の存在が知られていたのです。
このことを知ってがっかりすると同時に、東洋医学を再認識し、鍼灸の勉強を始めました。

それから約二年後、
小島喜久男教授(当時鹿児島大学薬理学)から漢方の特徴とその優秀さの説明を受け、
漢方を勉強するように強く勧められ、漢方の勉強を始めました。
(現在、日本では、東洋医学は漢方と鍼灸とから成り立っているので、
漢方は鍼灸に対応した呼び名として「湯液」と呼称するのがより適当だと思います)

しかし、いざ始めてみると、鍼灸の場合と同じく、
湯液でも、その原理、学説は、到底、納得、理解することが出来るようなものではないので、
この点について小島教授に相談すると、「先ず信じて、実行してみることだ。
そして、その結果を実感することだ。まず実行しなさい。」の一点張りでした。

約二年の間、お借りした本を含めて種々の本を、
「まず信じて実行すること」を心がけて読み漁りました。

しかし、展望は開きません。
思い余って小島教授に、湯液の理論や学説の、構築の基礎となる原理を、
納得して理解することが出来ないという理由で、湯液の研究を断念したいと申し出ました。

小島先生は暫く黙って下を向いて居られましたが、
「同じ東洋医学である漢方を鍼灸と関連づけて考えてみたら」、との教示でした。

湯液と鍼灸に二股をかけると、どちらも大成しないと聞いていたし、
湯液は薬理学、鍼灸は生理学と分野も異なっているので、
両者を関連づける事など全く考慮の外でした。

しかし、小島先生の教示を受けた瞬間、私には両者に対する研究方法と、
それらの大体の結論が脳裏にひらめきました。

私は、その頃、鍼灸での種々の理論が信用できず、
自分自身が納得した独自の理論による複数の研究を行って試行錯誤をくり返していましたが、
その中で、確からしいと、研究を続行していたテーマがありました。
それは「気滞を解消すると病は治癒に向かう」というものでした。

これは、疾病のとき出現する、「気滞」と名づけた、或る現象が解消すると、
疾病は治癒に向かうという事実を、多くの鍼灸の治療経験の結果、
例外無しの、正しい治癒の原則だと確信したばかりの頃でした。
(気滞、ならびに経絡—[と思われるもの]—は、特殊の感覚—[原始感覚とでも呼ばれる、
人間が忘れ去った感覚で、練習によって取り戻す事の出来る感覚]—によってのみ感知できます。)

鍼灸では、「気滞を消去することによって疾病は治癒の方向に向かう」。
それならば湯液でも同様の可能性が考えられるのでは!
[気滞を消去すれば疾病は治癒に向かう]が東洋医学 否 医療全体に共通する原理ではなかろうか、
と考えました。

「湯液、鍼灸作用同一論」はこの瞬間に誕生したと思います。

私は、改めてこの観点から湯液の勉強を始めました。
数年の後、湯液と現代医学的薬物との両者を区別をする事なく利用して、
気滞を消去することが可能となり、
その臨床での病状観察から、
「気滞を消去すれば疾病は治癒の方向に向かう」には例外がない事を確かめました。

このことから、上述の疾病治癒の原理は洋の東西を問わず動かしがたい真理であると確信しています。

「湯液、鍼灸作用同一論」は「気滞を消去すれば疾病は治癒の方向に向かう。
という全医療に共通する治癒の原理」から導き出された理論です。

興味のある方は『始原東洋医学』、高城書房をお読みください。

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